今後の展望
ここ数年で産業医に期待される役割は大きく増えてきました。以前までは、産業医の役割といえば、月に1回程度来社して職場巡視や衛生委員会への出席をするくらいの認識が一般的だったでしょう。しかし、最近では、長時間労働者に対する面接指導など、直接労働者と関わる機会も多いです。以前までなら、産業医のいる職場で働いている人でも、産業医と顔を合わせる機会はほとんどないという人もいたでしょう。最近では産業医の仕事が増えるとともに、労働者と接する機会も増えています。
そして、このような傾向は今後も続くとの見方が強いです。産業医にはこれまで以上に、多様なスキルが求められるでしょう。生活習慣病予防からメンタルヘルスケアまで幅広く対応しなければなりません。工場などでは危険防止の対策も求められます。
また、将来的に産業医不足も懸念されています。現状では医師の3~4割程度が産業医認定を受けていますが、十分な人数ではありません。
産業医が抱える課題
近年ではメンタルヘルスの問題を抱える労働者が増えており、産業医が対策を求められるケースが多いです。精神疾患を発症して労災認定を受ける件数も年々増加しているため、産業医としては、面接指導などを通じて対応しなければなりません。
しかし、産業医の中には、精神科や心療内科が専門でない医師も多いです。専門外でもメンタルヘルス対策を行わなければならないのが、産業医が抱えている課題の1つと言えます。現状でメンタルヘルスケアに対するニーズが減る兆候はほとんどないため、この傾向は今後も続くでしょう。
また、女性の社会進出が進む中で、産業医が女性の健康問題に関わる機会も増えてきました。メンタルヘルスケアと同様に、婦人科が専門でない産業医でも対応しなければなりません。女性の産業医が少ないことも課題の1つです。健康に関する悩みを抱えている女性でも、男性の産業医には相談しづらい場合もあります。その結果、状況が悪化してしまうこともあるでしょう。